カスタマーサクセスのKPIの作り方|顧客の成功を定義して、一緒に達成する法人営業の仕事

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法人営業担当者の仕事は、当然、自社の売上予算の達成も重要です。ですが、自社・顧客の双方から求められ、今後さらに重要になってくる役割は、

顧客の成功(KPI)を定義して、一緒に達成を目指すこと

だと思っています。

「カスタマーサクセス」という言葉が広がってきましたが、その中身は突き詰めればこの1点です。顧客にとっての「成功」を言葉と数値で定義し、合意し、一緒に追いかける。この記事では、そのKPIの作り方を、私の進め方に沿って書いてみます。

カスタマーサクセスのKPIとは何か

KPIとは、目標の達成度を測るための数値指標のことです。カスタマーサクセスで言うKPIは、「顧客の成功が、どの数値がどうなれば達成と言えるのか」を定めたものになります。

なぜ定義が必要かというと、定義が無ければ、プロジェクトや提案の成否を判断できないからです。

「良くなった気がする」では、顧客の経営層は納得しません。投資に見合ったのか、次の投資をするべきかは、数値でしか判断できないからです。そして数値を決める作業は、顧客任せにしない方がいい。提案する領域については、顧客よりも自社の方が精通しているはずだからです。

つまりKPIの定義は、カスタマーサクセスの出発点であり、法人営業担当者が担うべき仕事だと思っています。

顧客のKPIの定義の仕方【3ステップ】

ステップ1: 経営課題を把握する

最初にやるのは、顧客の経営課題の把握です。

結論として、理想は経営者、少なくとも決裁権限者・部長職以上、取締役等とのコミュニケーションが不可欠です。

顧客の現場担当者との日々のやり取りでは、様々な課題を聞かされ、それが自社の仕事に繋がります。しかし、その課題への対策を講じるだけでは不十分です。現場の課題は、経営者や決裁権限者が描く将来像や経営課題が、現場に落とし込まれたものだからです。

ですので、法人営業担当者にとって重要なのは、

  • 経営者や決裁権限者とコミュニケーションを取り、経営課題を把握すること
  • または、現場の課題から経営課題を推定(仮説)すること
  • 経営課題の解決に対する提案をすること

の3つです。

私が経営課題を聞く時に意識しているのは、「今期、会社として一番変えたいことは何ですか」「その課題が解決すると、どの数字がどう変わりますか」といった、会社の方針と数値を結びつける質問です。現場の困りごとを、そのままKPIにしないことがポイントだと思っています。

顧客を理解する進め方については、こちらの記事でも書いています。

ステップ2: 提案とセットでKPIを設定し、合意する

経営課題が見えたら、それに対する提案を行い、その提案が成功かどうかを判断するKPIを設定して、顧客と合意します。

このKPI設定には、2つの目的があります。

1つ目は、顧客のためです。顧客は自社へ投資してくれることになるため、数値的なKPIによって、その提案・プロジェクトの成否を判断することを求めます。顧客の経営者・決裁権限者は数値KPIを求めますから、どのような成功を定義するにせよ、数値化する部分が必須となります(定量目標+定性目標は可)。

2つ目は、自社の目標達成のためです。自社からの発案でKPIを設定することで、不用意に高い目標を掲げるリスクを低減できます。言い換えると、顧客の期待値を現実的な範囲に置くことができる、ということです。

期待値のコントロールについては、こちらの記事に詳しく書いています。

なお、現実的なKPIを設定するには、自社の製造・納品部門との相談が不可欠です。営業が単独で約束した数値は、現場の無理に直結します。

ステップ3: 定量+定性で数値化する

KPIは、可能な限り定量(数値)にします。経営課題によって使える数値は様々ですが、例えば次のようなものがあります。

  • 処理にかかる時間(作業時間の削減)
  • 処理件数やリードタイム(納期の短縮)
  • コスト(外注費、残業代、在庫金額)
  • 在庫回転率や不良率といった品質・効率の指標

大切なのは、現状の数値(ビフォー)を先に押さえることです。現状が分からなければ、改善幅も測れません。現状値と目標値をセットで合意しておくと、後のレビューで揉めません。

一方で、数値化しにくい成功もあります。「現場の負担感が減る」「属人化が解消される」といったものは、定性目標として言葉で定義しておくのが現実的です。定量+定性の組み合わせで構いません。ただし、丸ごと定性だけにすると成否の判断が曖昧になるので、最低1つは数値の軸を持つようにしています。

KPIを決めた後にやること

KPIは、決めて終わりではありません。むしろ、決めた後からがカスタマーサクセスの本番です。

  • 定期的に進捗をレビューする(月次など、顧客と数値を一緒に見る場を持つ)
  • ズレが出たら、原因が自社の納品側か、顧客側の運用か、KPIの設定自体かを切り分ける
  • 状況が変わったら、KPI自体を見直して再合意する
  • 社内の製造・納品部門とも数値を共有し、同じ目標を見る

KPIを一緒に追いかける関係ができると、営業は「売って終わり」ではなくなります。次の提案も、成功の延長線で話せるようになります。

顧客起点で考える姿勢については、こちらの記事にも書いています。

よくある失敗パターン

最後に、KPI設定でよく見る失敗を2つ書いておきます。

1つ目は、KPIを顧客任せにして、高すぎる目標をそのまま呑んでしまうことです。受注したい気持ちが先に立つと、「とにかく頑張ります」で合意してしまう。ですが、達成できないKPIは、後の不信感に直結します。現実的な数値を自分から提示する方が、長期的には信頼されます。

2つ目は、KPIを決めて終わりにすることです。レビューの場が無ければ、KPIはただの飾りになります。決めた数値を定期的に一緒に見る約束まで含めて、初めてKPI設定と言えると思います。

まとめ

法人営業の仕事は、顧客の成功(KPI)を定義して、一緒に達成を目指すことです。

  • KPIの定義は、顧客任せにせず、自社・法人営業担当が主導する
  • 進め方は、経営課題の把握 → 提案とKPIの設定・合意 → 定量+定性での数値化、の3ステップ
  • 決めた後は、定期レビューと見直しまで含めて運用する

このような動きができる法人営業担当者が、今後求められるし、顧客・自社からの評価も高まると考えています。

筆者プロフィールはこちら。

この記事のテーマを深める本

『ストックビジネスの教科書』(大竹啓裕)

継続的に収益が積み上がるビジネスの作り方を説いた本で、収益を「基準収益×増加数×継続率×時間」で捉え、特に継続率を守りの要と位置づけています。顧客の成功を数値で定義する、というこの記事のテーマに最も近い1冊です。

『データ分析読解の技術』(菅原琢)

データを読む時の落とし穴を整理した本です。複雑な問題を単一の原因で説明しないこと、数字と主張が対応しているかを確認することなど、KPIを「決めた後」に正しく読み続けるための視点が得られます。

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