中小企業の研修・教育制度は、はっきり言って手薄です。特に営業職は、教えること自体が難しく、手本も少ない。入社して「あとは現場で学んで」と言われ、戸惑った経験のある人は多いと思います。
私自身、新卒で入った中小企業で法人営業を2010年から10年以上続けてきましたが、研修で育ったという実感はあまりありません。待っていても育ててもらえないなら、自分で学ぶ仕組みを作るしかない。この記事では、中小企業の研修・教育の実態と、営業職が自分で成長するために実践してきた4つの方法について綴ります。
※あくまで私が歩んできた経験に基づく内容であり、すべての企業に該当するわけではありません。
中小企業の研修・教育の実態
OJTが基本、制度的に確立されているものは少ない
まず、会社の制度として確立されている研修や教育プログラムは、現場で活躍するには不十分な印象が強いと言わざるを得ません。
私の場合、3ヶ月程度の社内研修と外部研修を経て、基本的にはOJTで現場に出て先輩から学ぶという流れでした。大企業のように年次別のカリキュラムが用意されているわけではなく、「現場に出て、やりながら覚える」が原則です。
社内研修、「自習と言われても何すれば…」
実体験としても、また後輩社員の姿を見ても感じるのが「自習時間」の難しさです。
業務で使う用語の調査や、業界知識に関するテスト等に取り組むものの、これが現場の直結したスキルとして機能しにくい。何の知識もない状態から入社した新人が、明確な目的意識を持って自習に打ち込むのは非常にハードルが高く、結果として「時間だけが過ぎていく」という感覚に陥りがちです。
徐々に改善の気配は見られるものの、「時間だけ与えられて、目的は自分で考えて」というスタイルは、新人にとってかなり酷な環境だと言えます。
外部研修、営業として学べるものが少ない
社外のセミナーや新入社員向け研修に参加する機会もあります。名刺の渡し方などのビジネスマナー研修は有用ですが、「営業職」の本質に踏み込んだ内容となると、「あとは現場で学んでくれ」というスタンスになりがちです。営業活動そのものを体系的に学べる外部研修は、ほとんど存在しません。
これは、後輩に仕事を教える立場になった今だからこそ分かります。営業という職種は、教えるのが極めて難しい。優秀な営業マンは、自身の経験や勘をスキルやテクニックとして昇華させ、他者に言語化して伝達できるのかもしれません。しかし、私のような普通の営業マンは、試行錯誤の経験を重ねて何とか人並みに仕事を回せるようになったものの、それを他者へ体系的に教えるための知見は持ち合わせていませんでした。
結局、エース社員の背中に頼らざるを得ない(そして、それによって業務が回り、企業規模が小さいうちは一定の業績も保たれる)というのが、中小企業の構造的な限界であり現実です。
では、どうすれば良いのか?
この環境下で生き残り、成長するための答えとして、私は以下の4つを挙げています。
- 必要な基礎スキルを見極めて自ら学ぶ
- 都度、振り返りを行う
- 先輩の動きを徹底的に真似る
- 社外との繋がりを持つ
方法1: 必要な基礎スキルを見極めて自ら学ぶ
多くのビジネスパーソンが説く通り、会計・IT・マーケティングといった領域は、業種や職種を問わずビジネスの土台となる必須スキルです。
ここで重要なのは、会社から与えられるのを待つのではなく、自分に何が不足しているかを見極め、自ら学びに行く姿勢です。私も、書籍、資格試験、動画コンテンツを使い分けて基礎を固めてきました。
- 本: 全体像を体系立てて理解したい時(会計やマーケティングの基礎把握に最適)
- 資格: 期限と合否という強制力を利用して自分を追い込みたい時
- YouTube・ブログ: 具体的な事例や最新の動向を短時間でインプットしたい時
最初からすべてを完璧にする必要はありません。今の担当業務に最も近い領域から、1つずつ手をつけていくで十分です。
方法2: 都度、振り返りをする
特に中小企業の営業職は、早い段階から自身の顧客を持ち、1人で商談に臨むケースが多々あります。
上手くいった商談、失敗した商談、あるいは1つのプロジェクトの節目。そのタイミングごとに、成功や失敗の要因を分析し、ノウハウとして蓄積していくことが不可欠です。
ポイントは、頭の中だけで「反省」して終わりにしないことです。「なぜあの瞬間、相手の反応が変わったのか」を、短くてもいいので必ず言語化して残す。この言語化の習慣が、のちの大きな差を生みます。
もちろん、先輩との同行時であれば、フィードバックを積極的に求めるべきです。「さっきの場面、自分ならどう切り返していましたか?」と具体的に問うことで、有益な助言を引き出しやすくなります。
方法3: 先輩の真似をする
大企業に比べてリソースが限られているにもかかわらず、中小企業が倒産せずに存続しているのはなぜか。それは、業績を牽引するエース社員の存在があるからです。(※なお、そのエース社員がどの環境でも通用する万能な人材とは限らず、その企業構造や環境だからこそ輝いている場合も多い点は留意すべきです)
いずれにせよ、今身を置く環境で成果を出している以上、その人の仕事のやり方を観察し、徹底的に真似て自分に取り入れるべきです。
見るべき対象は、華やかな商談の場だけではありません。商談前の準備プロセス、資料の構成、言葉の選び方、上司への報連相のタイミングなど、結果を出す人の「型」は、むしろ地味な日常のなかに宿っています。
方法4: 社外との繋がりをもつ
先述した通り、社内のエースであっても、そのノウハウが他の環境でも通用する再現性を持っているとは限りません。
だからこそ、社外との繋がりを持つことが重要になります。
- 社外のセミナーや勉強会への参加
- 趣味や関心を通じたコミュニティ
- 友人、特に高校・大学時代(ある程度、学力・経験・働き方等が同類になるので、小中学校よりもそれ以上の方が望ましい)
会社という閉じた世界の外に目を向け、他流試合を経験する。「このままではマズい」という健全な危機感を持ち、他の営業マンが何に挑んでいるかを知ることは、自身の現在地を測る上で強烈なプラスアルファとなります。
教える立場になって分かったこと
この記事を最初に執筆した当時、私はまだ「学ぶ側」の人間でした。現在は、大手法人顧客の担当やカスタマーサクセスと並行し、営業・技術職が混成する約10名のチームリーダーとして、メンバーを導く立場にあります。
指導する側に回って痛感したのは、「教えようとした瞬間、自分のノウハウがいかに言語化できていなかったかに気づく」という事実です。かつて「普通の営業マンは体系的に教えられない」と書きましたが、それは今の自分にもそのまま突き刺さります。他人に説明できない知識は、結局のところ、自分自身でも曖昧にしか理解できていないのです。
逆に言えば、若手時代に続けてきた「振り返り、言葉にして残す」という作業は、ここで確かな効力を発揮しました。商談の節目に残したメモは、そのまま後輩を指導するための教材となります。振り返りは自分の成長のためだけでなく、未来の自分が「教える側」に立ったときの唯一の武器になる。これが今の偽らざる実感です。
そして、教えるという行為自体が、最高の学び直しになります。知識を整理する過程で自身の仕事の穴が見えてくる。研修制度が手薄い組織では、「教える者が一番学ぶ」という循環を、自らの手で作り出すしかないのです。
私の読書の仕方については、別の記事にもまとめています。
社内の競合が少ない分、活躍のチャンス
教育・研修面での不足感があり、一見すると学びづらい環境に映る中小企業の営業職ですが、裏を返せば、社内で直接的な競争相手となる同僚が少ないということでもあります。
少しだけ人より勉強し、少しだけ独自のスキルや光るものを身につけさえすれば、組織内で飛躍的に活躍するチャンスはいくらでも転がっています。その会社での出世をモチベーションにするにせよ、次のステップへの踏み台にするにせよ、今の環境で圧倒的な評価を勝ち取ることのメリットは計り知れません。
中小企業に向いている人の特徴|向いていない人との違いを、10年働いた実感で書く
まとめ
中小企業の研修・教育は手薄であり、営業職は待っていても育ちません。だからこそ、以下の4つを自律的に回していくことが成長への近道です。
- 必要な基礎スキルを見極めて自ら学ぶ
- 都度、振り返りを行い、言葉にして残す
- 先輩のやり方を徹底的に真似る
- 社外との繋がりを持ち、視野を広げる
この蓄積は、あなたの市場価値を高めるだけでなく、将来的に誰かを導く立場に立ったときの強靭な武器となります。環境のせいにせず、自らの意思で学びの仕組みを構築していきましょう。


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